1 人の人物を想像してみてください。その人はゲームをプレイまたはゲーム課金をつづけていて、周囲の人が説得や説教、あるいは叱責したりしても決してそれをやめようとしない。ひょっとすると、一度はそれをやめたり回数・量を減らしたりすることに成功したこともあったのですが、結局はまたゲームをプレイまたはゲーム課金し始めてしまった。もしもこのような人があなたの身近にいるとしたら、その人は「ゲーム障害」という障害を抱えている可能性があります。ゲーム障害は国際的に認められている精神障害のひとつです。ギャンブル性の強い依存性のあるゲームをプレイし課金をつづけているうちに心身に異変が生じ、ゲームをプレイし課金をしたいという気持ち(渇望)が強くなりすぎて、自分ではコントロールできなくなり、現実にいろいろと不都合が生じているにもかかわらずゲームをプレイし課金をしつづけてしまう障害です。ギャンブル性が小さくインターネット接続環境にない家庭用据え置きゲーム機なども、使い方を誤ると依存症になる可能性があります。何回くらいゲームをプレイし課金をするとゲーム障害になってしまうかは個人差が大きいので一概にはいえませんが、通常は一度プレイしただけでゲーム障害になることはありません。何度もプレイし課金をしつづけるうちにその人の中に依存が形成され、異変が生じてきます。ただし、ゲーム障害に陥った人は、まさか自分がそのような事態になるとは思わずに最初のプレイ/課金をしたわけですから、最初の一回の持つ重みは大変なものです。

 

ゲーム障害は、その人の心身に異変を起こし、ゲームをプレイし課金をしつづけさせるだけでなく、他にも様々な深刻な問題をもたらします。これらはゲーム障害という障害がもたらす二次的な問題ですが、肝心の依存症という障害は目に見えず、度重なる借金や暴力、犯罪行為といった問題行動ばかりが目立ちますので、周囲の人はこういった問題の対応に日々追われるようになります。

 

下記の表 1 に挙げられた行動は、ご家族の方からみた代表的なゲーム障害者・ゲーム依存症者の問題行動です。ゲーム障害は、その人の心身に変化をもたらすだけではなく、その人の生活全般や周囲の人々にも被害をもたらす障害であることがわかります。ただ、このような困った言動の多くは、本来のその人の性格によるものではなく、障害の影響によるものですから、ゲーム障害の治療を受けることで少しずつ目立たなくなっていきます。

 

表1 ご家族の方からみた代表的なゲーム障害者・ゲーム依存症者の問題行動

感情の起伏が激しく、人が変わったようになった 
ゲームを買うため/ゲーム課金をするために嘘をついた 
ゲームについて尋ねると不機嫌になった 
意味不明な話をしたり行動がまとまらないことがあった 
家の中で不適切な態様または程度でゲームをした 
過大なほどのゲームの道具・周辺機器が出てきた 
ゲームを見つかって開き直ったことがある
ゲームのプレイ中に大声を出したり暴れたりした 
ゲームが原因で仕事を解雇された 
ゲームが原因で身体的問題が起き、受診した 
本人が作った借金の督促が来たことがある 
ゲームをして暴力を振るうことがあった
ゲームのために補導・逮捕されたことがある 
ゲーム依存症、ゲーム中毒、中毒性精神病の診断を受けた 
ゲームをやめるための入院をした 

 

ゲーム障害の治療や回復を考える時に、なぜ家族が重要な存在として注目を浴びるのかというと、そこには二つの理由があると思われます。
まず一つ目は、ゲーム障害者本人の回復に対して家族の協力が大きく関わってくることです。ゲーム障害は治療を必要とする精神障害の一つでありながら、本人は自ら治療を受ける意思がないことが非常に多く見受けられます。そのような状況の中でも、家族が上手に対応し、治療
に関する提案ができるようになることで、本人が治療を受け入れる可能性は高くなるでしょう。この病気はいつでも再発する可能性がありますが、その再発を防ぐためにも、身近な家族にはできることがたくさんあるのです。実際に、支援者が家族に対する介入を行うことにより、依存症者の予後を改善することができたという研究結果が、これまでに多数報告されています。
二つ目の理由は、家族自身のことです。長い間本人のゲームプレイとゲーム課金問題に巻き込まれ続けた家族の多くは、心身の健康に問題を抱えながら生活しています。これもまた過去の研究で広く実証されていることですが、依存症者を持つ家族の中には、家族自身が精神科的なケアを必要としている人も少なくないのです。このような家族に対して支援介入を行うことは、本人の治療や回復と切り離して考えても非常に重要なことであるといえます。

 

ご家族の方へ